【経済を見る!松田政策研究所がお勧めする計数等情報】


 

〇政府の経済運営

日本では近年、経済政策についての国の司令塔は「経済財政諮問会議」です。そこでは総理大臣以下、経済関係閣僚や日銀総裁、民間有識者たちが経済全体についての議論を交わします。経済政策に関して政府には色々な会議や委員会などがありますが、その頂点に位置するのがこの会議です。議事要旨が公開されていますので、それを読むことは、経済政策の動向をつかむ上で重要な作業になります。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/

〇経済財政についての政府の中長期的なスタンス

政府の経済政策の中で最も重要なのは言うまでもなく財政運営です。経済や財政に関して、政府がどのようなスタンスで臨んでいるかは、内閣府が経済財政諮問会議に提出している「中長期の経済財政に関する試算」に示されます。毎年1月と7月に改訂され、公表されています。
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan.html
2018年1月には、前年の衆議院選挙で安倍政権が公約した消費税の使途変更によって数値全体が改定され、2027年度の数字まで公表されています。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h30chuuchouki1.pdf
プライマリーバランス達成目標は、2020年度から25年に先送りされます。それを盛り込んだ推計試算が2018年7月の改定試算に盛り込まれる予定です。

〇毎年度の経済政策の基本姿勢と経済見通し

翌年度において政府が望ましい経済の姿をどのように想定し、その実現に向けてどのような政策スタンスをとろうとしているかは、俗に「政府経済見通し」と呼ばれる内閣府「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に示されます。政府予算案と一体で基本的な数字や政策スタンスが決まりますので、毎年、年末の政府予算決定時に閣議了解が行われ、さらに数字等の精査を経て、年明けの1月に閣議決定に格上げされます。
http://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi/mitoshi.html

〇政府予算

毎年度、年末(このところは概ねクリスマス前後)に、政府予算案が決定されます。税制改正や財政投融資計画など財政関係の意思決定は、この時期になされますので、財政については毎年、クリスマス直後ぐらいに財務省のホームページをご覧いただくのが良いと思います。https://www.mof.go.jp/
政府の一般会計については、この中で「予算・決算」の窓を開ければ、色々な資料が出てきますが、予算の概略を把握するのに便利なのは、そこから毎年度の「予算」をクリックし、最新年度(平成30年度)をクリックして、さらに「政府案」をクリック、そして「平成30年度予算政府案」が出てきますから、それをクリックすると出てくるいくつかの資料の窓のうち、「平成30年度予算のポイント」と「我が国の財政事情」の2つです。これらをご覧いただくことをお勧めします。予算案の決定による最新の数字を入れた、最も使い勝手の良い(財務省が作成したものの中では、ですが…)財政の現状を概ね把握できる図表集が出てきます。
平成30年度予算のポイント:https://goo.gl/mYrFok
我が国の財政事情:https://goo.gl/7Vt9Mz

〇日本経済全体のマクロの数字…GDP速報値

…四半期ごとに内閣府が発表する「国民経済計算」。経済の動きを総合的にみるのはやはり、この統計です。前の四半期が終了した翌々月に公表されます。例えば、1-3月期なら5月です。特に重要なのは、
・年率換算の実質季節調整済系列(前期比)
その内訳として特に大事なのは、
・国内総生産(GDP)、民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、公的固定資本形成
・年率換算の実質季節調整済系列(寄与度)
その中でみるべきものは
・内需寄与度、外需寄与度
・実質年度と名目年度の増加率→毎年5月に、前年度の数字が出ます。
その内訳等として見るべき項目については上記と同じです。⇒ただ、以上の国民経済計算速報値は、次をクリックして実際に見ていただければわかるように煩雑で、使い勝手がよくありません。 https://goo.gl/MTVwYk
むしろ、経済全体の数字は、内閣府が毎月公表している「月例経済報告主要経済指標」をご覧いただいた方がよいと思います。 https://goo.gl/dZEcA2
この中で、GDPに関する最新の動きは、ここに出ている表に分かりやすく総合的にまとめられています。
「国民所得統計速報(PDF形式:46KB)」 https://goo.gl/i9yjLD
こちらをお使いになることをお勧めします。

〇家計と企業と政府など部門間のおカネの流れ…日銀資金循環統計

日本銀行が毎年3月に、前年の「資金循環統計」を公表しています。
https://goo.gl/Ku71Rw
→この中の(図表1)部門別の金融資産・負債残高(2017年12月末、兆円)これが日本のおカネの流れを大きく捉える上で貴重な情報です。個人金融資産がいくらあり、それが政府を始めとするどの部門にどのような形でどう流れているのか等を把握できます。

〇日銀のバランスシート…日本銀行「毎旬営業報告」

https://goo.gl/YYNEgw
ここから例えば、最新のものを出すと
https://goo.gl/GqQqmd
日銀のバランスシートの規模と内訳の数字が出ています。日銀が現時点で国債をいくら持っていて、マネタリーベースである日銀当座預金や日本銀行券発行残高がいくらあるかを、毎旬ですから、ほぼリアルタイムで把握できます。これらの数字は、特に目下、異次元の金融緩和が行われている状況において、金融政策をみる上で大事な数字です。

〇市中のおカネ…日銀「マネーストック」

市中にどれぐらいのおカネがあるかの総量と伸び率が出ています。市中マネーのおおよその量の見当をつけられます。月毎に翌月に公表されています。
https://goo.gl/GBGHGv
例えば、最新の数字は下記ですが、見るべきなのは、M2の数字でしょう。これは現金と預金の合計です。日本は現状で市中マネーが1,000兆円ぐらいになっていることがわかります。
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms1804.pdf

〇金融(マネーや金利)、株価や為替などの指標

マネーストックやマネタリーベース、それに金利などの金融指標、あるいは株価や円の為替レートなども、月次でみるのであれば、前述の内閣府「月例経済報告主要経済指標」の中の「金融」の窓↓を開けていただくのが便利です。https://goo.gl/Wr1Y91

〇日本の対外純資産残高

日本は四半世紀以上にわたり世界最大の純資産国です。世界におカネを供給している日本の姿が現れています。毎年5月に財務省が「本邦対外資産負債残高の概要」として前年末時点の数字を公表しています。
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2017_g.htm
その中でも、この表が他国との比較がなされていてわかりやすいです。これだけみれば十分でしょう。
「主要国の対外純資産」:https://goo.gl/3bDhDt

〇デフレ脱却度をみる指標

デフレから日本経済は脱却したのか?と言われれば、需給ギャップは需要超過になっていますし、消費者物価もプラスですから、一応、数字の上では脱却しています。しかし、デフレというのは経済の体質のことも指しますし、日銀が目標として掲げているインフレ率2%目標も依然として達せられておらず、「デフレ経済」から抜け出したとまでは言いにくいようです。この辺りを指標で判断する際は次の指標が用いられています。
①消費者物価上昇率前年比(CPI)総務省統計局が毎月、「使用日者物価指数(CPI)」を公表しています。
http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html
この中で、前月までの3か月ぐらいと、年の数字3年分が出ている次の表が使い勝手がよいといえます。この中で、日銀がインフレ目標として2%達成を掲げているのが、「生鮮食品を除く総合」の前年同月比や前年比です。これは物価から価格変動の激しい生鮮食品の価格の影響を除外することで経済の実勢をより反映した物価指標とされているもので、「コアインフレ率」と呼ばれます。
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
② GDPギャップ:俗に「需給ギャップ」と呼ばれる「GDPギャップ」
③GDPデフレーター上昇率
この②と③のいずれも、前述の内閣府「月例経済報告主要経済指標」の中の「国民所得統計速報(PDF形式:46KB)」の中に出ています。↓(前出と同じ)
https://goo.gl/15mEzZ

〇雇用情勢を表す指標

業率や有効求人倍率などがありますが、これも、前述の内閣府「月例経済報告主要経済指標」の中に「雇用情勢」の窓があり↓、大体はこれで分かります。
https://goo.gl/PMncdb
ただ、雇用情勢を少し詳しく把握するためには、賃金の動きなどが分かる厚生労働省「毎月勤労統計調査」が毎月公表されているので、これをご覧になるのが良いでしょう。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html
その中で、直近の数字は、調査の「結果の概要」でアクセスするのが良いと思います。
https://goo.gl/u7XLko
賃金が上がっても、それ以上に物価が上がってしまっては、実質賃金はマイナスです。多くの国民にとっての経済の実感を見る上で大事なのは実質賃金ですが、アベノミクスのもとでも長らくマイナスが続いてきました。この動きも上記の中で見ることができます。以上、私、松田学がよく使う統計指標を中心にご紹介してきましたが、一般的には、主なものだけでも、次の指標があります。
・対外的な経済取引を把握する統計として代表的なのは、モノの輸出入を捉えた「貿易統計」(財務省、毎月)と、モノに加え、サービスやおカネの出入りも捉えた「国際収支統計」(財務省及び日本銀行、毎月)が代表的です。
・産業界の動向を把握する統計としては、生産や在庫などの動向を把握する「鉱工業生産指数」(IIP、経済産業省、毎月)、企業の収益や設備投資、財務状況などを把握する「法人企業統計調査」(財務省、四半期)、企業の業況や景況感を把握するアンケート調査である「企業短期経済観測調査」(日銀短観、日本銀行、四半期)が代表的です。
ほかにも、参考にすべきデータは多数あります。順次、付け加えていきたいと思います。